WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行

世界保健機構(WHO)は、飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 WHO 2009を発行し、WHOのホームページでも公開していますのでお知らせ致します。

この書籍は194ページからなり、当ホームページで以前ご紹介しましたが、WHOは飲料水中の栄養素と健康に関する調査を開始し、『飲料水中の栄養素』 WHO 2005年、『心血管疾患に対する硬水の予防効果の可能性』 WHO 2006年の報告書をそれぞれ発表しています。

この書籍2009の内容に関し、主な概要をハイライトします。

  • WHOは本書「謝辞」の欄に日本の厚生労働省からの支援として名前が明記されています。更に、大阪市立大学名誉教授、元日本マグネシウム学会理事長で骨粗鬆症に関する研究者 故 森井浩世(もりい・ひろとし)先生とご家族に弔慰が述べられています。
  • マグネシウム

    マグネシウムは体内で4番目に豊富な陽イオンで細胞内液中では2番目に豊富な陽イオンです。マグネシウムは、およそ350のエネルギー代謝系などに関係する酵素の活性化に関与しています。また、たんぱく質と核酸の合成にも関与し、正常な血管張力およびインスリン感受性の維持に必要です。低マグネシウムは、内皮細胞の機能不全、血管反応の増加、血中C反応性タンパク(CRP)濃度の上昇、インスリン感受性の低下に関連しています。低マグネシウム状態は、高血圧、冠状動脈硬化性心疾患、2型糖尿病およびメタボリックシンドロームに関係しています。
  • 高血圧
    マグネシウム不足は高血圧の発病に関係し、血圧と血清マグネシウム値の間には負の相関が報告されています。しかし、臨床試験からのデータはまだ不十分です。
  • 不整脈
    心室と心房由来の不整脈は、低マグネシウム血症患者に報告されています。致死性不整脈、心室頻拍はマグネシウム静注で治療されています。
  • 子癇前症
    子癇前症(妊娠中毒症、妊娠20週後の高血圧症)とタンパク尿の合併症には、何十年間もマグネシウム塩で治療されて来ました。最近の臨床試験(Altman et al. 2002)では硫酸マグネシウムを使用し子癇のリスクが50%減少したと報告されています。
  • 動脈硬化
    動物実験では、マグネシウム摂取と動脈硬化率や発症と逆(=保護的)の関係が報告されています。
  • 冠状動脈硬化性心疾患
    ヒトでは、マグネシウムと冠状動脈疾患と逆(=保護的)の関係のエビデンスがあります。 3つの横断的研究では、血中C反応性タンパク濃度(CRP:冠状動脈疾患のリスク因子としての炎症マーカー)とマグネシウム摂取や血清中マグネシウム濃度の間に逆の関係があり、マグネシウムには抗炎症作用の可能性を示唆する報告があります。
  • 糖尿病
    いくつかの研究で2型糖尿病におけるマグネシウムの重要性が報告されています。最近の2つの研究では、マグネシウム摂取と2型糖尿病を発症するリスクとの間に逆(=保護的)の関係が報告されています。また経口マグネシウムサプリメントは、インスリン感受性と2型糖尿病の血糖コントロールを改善することも報告されています。
  • マグネシウム不足状態
    アルコール中毒と腸管吸収不良症候群は、マグネシウム不足と関連した状態です。特定の薬、例えば利尿剤、ある種の抗生物質とガンの化学療法は、腎臓からのマグネシウムの排泄を増やします。
  • 高マグネシウム血症
    高マグネシウム血症の主な原因は、マグネシウム排泄能が著しく低下する腎不全です。マグネシウム塩の摂取増加によって排便習慣(下痢)に変化が起こる可能性があるが、めったに正常な腎機能を備えた人で高マグネシウム血症を来たしません。
  • 消化管機能
    マグネシウムと硫酸の両方が高濃度で存在する飲料水は便通を良くする効果があります。下剤の効果はサプリメントの形ではマグネシウムの過剰摂取により出ますが、食事中のマグネシウムと同一ではありません。

(参考文献)
WHO Calcium and Magnesium in Drinking-water : Public health significance, Geneva, World Health Organization, 2009
http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241563...

2011年2月 3日公開

ページトップへ